「FF」と「FF+4WD」のドライブシャフトの話
平成11年5月4日
FF車、FF系4WDにお乗りの方は気を付けて下さい。
構造上どうしてもついて回る話です。
DriveShaft(CV-Joint)等速ジョイントの話。
GWです。皆さんにお付き合いいただいて色々とご意見などお伺いする事も出来ました。
ありがとうございます!!
このところ電磁波防御アンテナなるモノを入手しまして非常に元気です。
その成果があってか、かなり長いサブジェクトになってしましましたが、チョット覚悟してお読み下さい。m(__)m
前輪が駆動する FF 構造はご承知の通り前輪がその「操舵」も担当します。(当り前ですね)
つまり、駆動軸が走行の為のトルクを伝達しながらその軸先が向きを変えて操舵の作業も同時に行います。従ってその「関節部分」にあたる「CV-Joint」はユニバ−サルジョイントのように常にこの運動によって変形を繰り返します。CV-Joint
自体はプロペラシャフトやステアリングのメインシャフトなどに使用されるクロスロッド&ベアリングキャップ4個といういわゆるユニバ−サルジョイントととは違った構造になっており、内部にベアリングが入ってはいるものの「整備工場レベルではその分解整備がまず不可能な部品」です。
従って、この部分に不具合の生じた場合のサ−ビスは「アッセンブリ−での交換」となります。
CV はエンジンから駆動輪へのアウトプット部分(インナ−・サイド)と車輪側(こちらがアウタ−)にあり、通常はモリグリスでグリスアップされた上にジャバラのラバ−・ブ−ツで保護されています。つまりフロントの左右で4個という事です。
気を付けて戴きたいのはこの「ブ−ツ部分」
絶えず形状の変化する部所に使用されるラバ−・ブ−ツであり、走行による熱も加わる為どうしても劣化が早い。つまり、ゴム質の硬化による亀裂・分裂といった破損が頻繁に起こります。新品のブ−ツは非常に柔らかい為、亀裂の生じたブ−ツと比べると同じ物とは思えないほどの硬さにまで硬化が進んでいるのが分かります。
そうですね、喩えていえばペットボトルくらいの硬さでしょうか。そして硬化した部分が屈曲を繰り返すうちに破損という事になる訳です。
問題はそのあと:
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で、今回私の購入した Legacy ですが、これは購入検討段階で最初にチェックした時点でCV の「インナ−&アウタ−の両方ブ−ツに」破損分裂がありましたので、「異音」の有無を確認する為、購入前に試乗をさせて頂きました。
結果はOKで購入となった訳ですが、その他には左タペットからのオイル滲みのある程度でエンジンのオイルメンテナンスは特別悪い方ではなかった様子、少々の茶色っぽいこびり付きがごく薄く出ている程度でしたから 6万3千キロならば許容レベルと判断しました。まあ、比較的良い方の部類でしょう。
そこでちょいと「よもやま話」:脱線です
オイル滲みは気分の良い物ではありませんが「ダダ漏れ状態」でなくて、滲んでいる程度ならば本人の気分だけの問題だと思っています。 そもそも私はオイル漏れ自体がシ−ルやガスケットの精度と組み付け時のトルクのばらつきとかによる物で「運」だと思っています。例えば半年後にオイルが漏れてきても諦めるしか仕方のない事ですからね。(新車の場合は勿論クレ−ムでしょう) で、フラッシングの為に入れたディ−ゼルオイルで 1,000KM 走った Legacy に先日 Syntron を入れました。 やっぱりいい感じですね、ディーゼル用のカスオイルと比べれば 「極上」 と表現しておきます。 低域のトルクが太った割には上が軽くなっています。 Syntron に替えてどう変わったか・・・:
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ドライブシャフト・ブ−ツの話に戻ります:
先日、名古屋のスバル・ディ−ラ−さんでこれのブ−ツ交換を口頭で見積って頂きましたが以下の通りでした。
フロント・インナ−ブ−ツ交換:30,000円(工賃のみ)
フロント・アウタ−ブ−ツ交換:17,000円(工賃のみ)
(共に左右両側)これにプラス「ブ−ツ、クランプ、グリス代」
もしも外してみてベアリングにガタの出ている場合と既に異音の出ている場合にはアッセンブリ−(Assy)交換となります。
CV-Joint/ DriveShaft Assy:約50,000円(インナ−&アウタ−純正部品代、片側分)
これの脱着工賃:約10,000円(片側分)
これにはリビルトも出回っています、工賃込みで片側25,000〜35,000円程度のようです。
リビルト交換は整備工場さんによって得手不得手という事もあるようですので、運悪くこれが必要となってしまった場合にはいくつか問い合わせてみると良いでしょう。
で、ここからが本題です。
「ドライブシャフト・ブ−ツ」
既に「徳重(トクエ)ゴム工業」の特許取得から確か10年近くなる部品ですがこの「アウタ−・ブ−ツ」には良い物が出ています。というのも、ドライブシャフトのブ−ツは
CV と一体になったメインシャフトをつなぎ目から抜いてやらないと通常のブ−ツ形状のものを通す事が出来ません(分かりますね)。その為、ブ−ツ交換はアッセンブリ−交換よりも手間が余分にかかりますからその作業工賃が高く付きます。
ところがこの特許のブ−ツは縦に割れていてシャフトを抜かなくてもブ−ツをはかせる事が出来ます。この特許の取得後、縫合面の強度と柔軟性という相反する苛酷な条件を満たす為の改良が続き、現在では殆どのカ−メ−カ−が交換部品として純正部品或いは純正用品に指定するまでに至っており、製品の信頼性という部分では間違いのない水準に達しています。
特許の絡みでこの製品の版権はすべてこの徳重ゴム工業にあるため、現在「純正」ル−トに流通している物も「優良部品(いわゆる市販)」ル−トに流通している物も中身は全く同じ物で、価格も全国一律で統制が取られています。
何処で買っても同じ値段というのは消費者にとって嬉しいような悲しいような話ではありますが、少なくとも「ぼったくり」に遭う事もないので安心できると解釈して下さい。(その後、マツダさんだけがMeltJointという製品に変わっています)
純正ドライブシャフトブ−ツは通常、両側のステンレス製バンド2個とモリグリ−ス(or グリス)がセットになって3,000円前後です。メ−カ−によってはブ−ツのみでもう少し安い場合もありますが、バンドとグリスは何れにせよ必要ですね。
各社の商標で売り出されているこの特許ブ−ツですが仮に「パックリ・ブ−ツ」とでも呼ぶ事にしましょう。
「パックリ・ブ−ツ」は次のブランド、商標で販売されています。
高いか安いかはこの交換工賃と比較してみると一目瞭然です。
ただ、頑固なサ−ビスマンはこれを嫌うフシもあります。
(前出のスバル・ディ−ラ−さんではスバル用品からこのパックリ・ブ−ツが発売されているにも拘わらず通常の現場では使用しないという事でした。)
「ドライブシャフトを外せばほぼ完璧に古いグリスと汚れが落とせるけれど、外さずにパックリ交換だと再修理の可能性が残る。」
「第一、これが走行中にパックリ開いてしまったら目も当てられない。」
というのが頑固派のご意見です。
「再修理」というのはなるほどユ−ザ−に対して「また壊れた」という不便な思いを強いることになるので、「こうしたご迷惑をお掛けしない様に」という配慮の部分。
それからもう一つは「また壊れた」という事実によるサ−ビスの質に対する「信頼の失墜を恐れる部分」が大きいと思います。ただ、先程の話で装着後に「パックリ」いってしまう様な事はまずない訳ではあります。
観念的な話になるかも知れませんが、
ユ−ザ−の信頼を得ているサ−ビス工場というのは得てしてこちらの傾向があります。
「良い状態を得るには多少の投資は必要だ」というのは原則ですから当然そうなるだろうというのも想像がつきます。
例えば現在では少数派になりましたがマニュアル車のクラッチ。これのクラッチ交換の場合。
「安い」だけを売りにして整備の仕事をしている場合。「安い事を期待しているユ−ザ−」に「高いサ−ビス」を供給すると嫌われます。でも、本当の意味では全く逆だと思います。
大抵の場合、初めてクラッチにスベリが出てミッションを降ろし、ハウジングを外してみればその元凶はクラッチ・ディスクでしょう。治るという意味だけならばこのディスクの交換だけで済む筈です。で、このディスクも純正から社外(優良部品=市販品)、そしてリビルトまで部品を選べる訳です。
従って「特に安い」事を要求するユ−ザ−にはリビルト・ディスクで交換という作業だけを提供するとします。
取り敢えずはクラッチのスベリが治まり、車は元通り動くようになりますがその次に近い将来起こるだろうクラッチ関係の不具合は最低でも3ヶ所、最大なら5〜6ヶ所に登ります。
つまり、クラッチカバ−、スラスト(ハブ)ベアリング、パイロット(インプット・シャフト)ベアリング、それにハブ・スリ−ブ、クラッチフォ−クに加えてリリ−ス・シリンダ−。機械的な摩耗による部品の寿命が来るのはざっとこんな所でしょう。(当然、あとどの位そのクルマで走るのか、という前提も考慮すべきです)
クラッチのハウジングを脱着する作業はそこそこの単価になります。そこでベアリングやカバ−Assyを同時に組み替えても作業工賃としては殆ど変わらないというのはお分かりになると思います。従ってこれらのベアリング交換だけの為にクラッチケ−スを降ろすのはかなり割高な作業になります。つまり、クラッチの O/H という整備でハウジングの脱着を行う場合には直接関係する同時交換の可能な部品を一度に替える事は「予防整備」という意味でかなり有意義だといえる訳です。
悲しいかな現実は「安さ」を求めるユ−ザ−の主張に対して「いや、そうでなくて・・・」と切り返せない整備工場さんも多いという状況に対して「良い整備の真意」を「理解しようとしないユ−ザ−さんが主権」を持っている場合も多い訳で、このいわば断絶もあるのでしょう。
あげくの果てにケチなユ−ザ−さんに限って「また壊れたからあそこはヘタだ」ということになる・・・。
結局は分かっていないヒトが大体そういう事を言う訳です。(笑)
「安くあげろ」が命題で整備をする場合、作業工賃を最大限圧縮しても最低限の部品代が出ます。そこでこの「予防整備」的な発想に基づいてユ−ザ−さんに納得して頂けるように説明の出来る「現場」というものの姿勢も今後特に必要になって来るものだと思います。
ユ−ザ−さんの為に良かれと思って交換した部品代が修理代としての総額や維持費として高いというイメ−ジを増幅させる事は現場としては「痛し痒し」なのだという事でしょう。そこで「選択できる部品も純正から社外品、リビルトまでありますよ」という説明も場合に応じて利用したり、説明しつつという事にもなりますね。
以前他の所にも書いていますが、そうしたきめの細かいアドバイスをしていただける整備工場さんが「よい修理屋さん」なのだと思います。欲をいえばオイルに関する知識も豊富であって欲しいですね。
もう一つの側面ではユ−ザ−サイドもこうした考えに理解を深める必要がありそうです。
あなたのお車の車検証の裏側の右側に枠で囲まれた文章がありますから今一度目を通してみて下さい。
そもそも、車という道具自体が便利に使える分だけ「贅沢」なものであり、その「便利さ故の維持費」という物をおかしな価値観でケチったりすることは「愚かなサル智恵」に過ぎないといったら言い過ぎでしょうか・・・?
だからといって最近の整備の現場は「何でもかんでも Assy 交換」する傾向がありますから「修理屋じゃなくて交換屋だ」だという口の悪い方もみえます。
まあ、昔の人に言わせればそういう事になるのかも知れません。事実、私のクラウンバンの「ロワ・ボ−ルジョイントとロワ・ア−ムブッシュ交換」というサブジェクトに対して整備を依頼したトヨタ店から
「ブッシュの交換はこのところ時例がなく、何年か前に専用プラ−を廃棄してしまったのでロワ・ア−ム Assy の交換でご了解頂きたい」という旨の話がありました。ロワ・ア−ム Assy にはボ−ルジョイントもブッシュも付いています、ア−ム本体はクラッシュでもない限り痛むものではありません。トヨタ部品は個別の部品を出庫するのにそういう事が現実にある訳です。
「専用プラ−代を一部負担して頂けないか?」という事でしたが(筋違いだと怒るのも大人げないので)結局 Assy 交換でお願いした訳ですが、そこら辺はこうした話し合いで解決できる話です。
うーん、やっぱりマニアックな整備を依頼したという事か・・・。(笑)
話がどんどん脇道に逸れますね、ごめんなさい。
で、頑固に「パックリ・ブ−ツは使用しない」と決めつけてしまうのも随分なものだと思うわけです。臨機応変に選択すれば良い事であって、必ずしも高い整備が良いとも限らないと思うのでそこのところはユ−ザ−さんに勉強していただいてオ−ナ−さん御自身に選択していただくのが一番だと言いたいですね。
一本気で腕の良い職人さんは新しいものに手を出すのが遅い傾向はもともと強いと思っています。
私としてはユ−ザ−さんもオイル交換など「自分で出来る事はご自分で」されてはいかがですか?
というご提案をしているのですが、
「いや、私はやった事がないので」とか「特別な道具もない」と敬遠される方が多いようです。
でも「オイル・フィラ−・キャップ」の位置さえ分からないヒトも「これですよ」と教えてもらうだけでどれがオイル・キャップなのかを認識できるように、それは本人に知ろうとする気があるかどうかだけの話です。
「苦手」といって自分が扉を閉ざしている場合、深さの分からない池の水を濁らせて底を見えなくしているのは大抵は自分なんですよ。プロのメカニックの方でも生まれて始めてする事は「初めて」に変わりはありません。簡単な事から入門すれば良いわけです。
DIY によって自分の車はより身近になるでしょう、更に可愛い相棒になる為の歩み寄りにもなる訳です。
随分と回りくどいですね。(^^ゞ
はっきりと申し上げます。
この「パックリ・ブ−ツ」なら自分で交換できます。(^○^)!
という事で実際に我が Legacy で実践してみました。
私自身も整備といえるレベルの事はした事がないに等しいので特に馴れた事をした訳でもありませんし、ゆっくりと作業しましたが左右で1時間という簡単な仕事でした。特別な工具も必要ありません。
「アウタ−・ブ−ツの覗き方」
ステアリングを右へ一杯に切り込んで右側のホイルホウスを斜め右上・下、前方から覗き込みます。手前側の車軸の中心線上にあるやや紡錘形のジャバラブ−ツがこのドライブシャフトブ−ツ。その後方にあるまっすぐな形のジャバラブ−ツはラック&ピニオンのラック・エンドブ−ツです。この状態のままで左の後方から同じ部分を覗く。
反対側はこの逆です。
ホイルハウスの内側にグリスの飛び散った痕がないか確認し、ブ−ツに切れ目、分離などがないか確認します。(出来れば360度)