米国ホィールアライメントの実状

アライメント・サービスとタイヤのローテンション

平成11年8月24日

日本の場合、タイヤのローテーションはGSさんで依頼すると「一台分4本で2500円」というのが相場の様です。
アメリカ本土では通常6ドルで同じサービスを受けられるといいますから、日本の作業工賃は不当に高額なセッティングをされているような気がしてしまいますが、日本のレバーコストが高すぎる事の証明なのかも知れません。
全ての物価なり、サービスの報酬は経済と連動していますから一概に儲けすぎだとかどうだ、といった議論は無意味だとは思いますがドルを140円で換算しても3分の1ですからねェ・・・、取り敢えず高いですね。


10年目に入ったクラウンバンでかつて実際に経験した話なのですが、走行距離2万キロ辺りで確実に認識したタイヤの片減り。

新品のタイヤは当然溝が深いので、そこそこ進行してからはっきりと気付いたのが何とも歯がゆかった記憶が今でも蘇ります。
1万キロ辺りで外側のショルダーに出始めた減り方に「妙」な感じはしていたのですが、元の溝が深い為に大きな差が出ていなかった為、ローテーションをせずに様子を見ていて、それが2万キロ近くなった頃にはっきりと認識できた訳です。ちなみに、この車はそれまでも今現在も無事故です。

どうしてそういった事が起こるのかというと、当然の事ながら「最初から」なんです。
(そうした同じような経験をお持ちの方も少なからずおみえになるのではないかと思います)
現在の新車にはまず見られないといった傾向があると良いのですが、どうでしょうか?

当時ディーラーさんに相談しましたが、

「片減りという程の偏摩耗は確認できない」
「トゥインもチェックしましたが、規定値以内でした」

という回答で、もっとひどいのを偏摩耗と呼ぶのかな?と思わせたかったようでした。
この意味を分かり易い日本語に翻訳すると・・・、

「そんなに気になるならば自分で気の済むように、何処でも好きなところへ持って行け!」
という意味です。(笑)

で、私は予てからお付き合いのあるボディ・ショップを尋ねました。
「へぇー、トヨタさんそう言った?分かわからんのだよね、アナライザーなんて持ってないし。相変わらず程度低いなあ・・・。」
そういいながら、車の回りを一周して
「アレ?」といって何をしたかというと:
前輪とフェンダーの隙間、つまりタイヤの一番前になる部分とフェンダーの隙間を指を揃えて測量して左右の差を見つけました。
「これ、右側のタイヤが後ろに下がってるよ。頻繁に舗道の段差に乗り上げたりするでしょう?」
(いえいえ、そんな、90度の坂なんて登ったりしませんよ!)
「いーえ、そんな駐車環境のところはありません。」
こんなやり取りがありました。

普通は左右対称の位置にタイヤが付いていますよね、右側が後ろに下がっているのがわざわざそうして作られているとしたら大きな交差点で右折するときの為の便宜でしょうか?(爆笑)
そんな筈はないですよね。
ということは「組み付け時のばらつき」これしか考えられない。
で、ディーラーさんは「規定値以内だ」というなら自分で直すしかない。
というわけで、改めてアナライザーを使用して調整して頂き、正常になったという経緯があります。

私がその整備をボディーショップに依頼したのは、その当時まだディーラーさんでも持っていなかったレーザー・アナライザーを15年以上前から使用していた、いわばそのキャリアに対する信頼からです。
(今ではそのトヨタ・ディーラーさんも系列会社の集中整備工場にホィールを回しながらアライメントの出来るアナライザーを設置しています)
で、当時はあまり一般的ではなかった訳です。
私はそれまでもそちらのアナライザーに3台ほどお世話になっておりましたので「腕を見込んで」という事ですネ。


で、アメリカでは何でも安い訳ですが・・・:

アライメントサービスは45ドル程度とやっぱり安い。
需要が多ければ単価が下がるという事もありますネ。

実は米国の場合、定期的なローテーションとアライメント整備は消費者の常識として定着していて、タイヤを販売する業者もこの「定期的なローテーションとアライメント整備」を条件にタイヤの保証をしています。もともと移動距離の長い国でのクルマにまつわる話なので少々視点を変えてみる機会にもなると思いますが、保証、つまりワランティは各々3万から7万マイル(約5〜10万キロ)といいます。(タイヤの保証ですよ!)
日本でいう分類で、例えばタクシーの中型車。クラウン、セド・グロクラスのタイヤでいえば、それに近い「195・75R14」というサイズだと40〜50ドルというのがタイヤの小売り単価です。めちゃめちゃ安いですよね。で、ワランティが付いているという事はキッチリ手入れをしていれば「その程度本当にもつタイヤ」という意味です。勿論世界的に有名なブランドの製品でこの価格です。
広い国土で発進加速もコーナーも少なければタイヤの減りも少ないでしょう。ハイグリップが要求される土壌でもなさそうですから減りにくいタイヤでもあるのかも知れません。

日本流の考え方からすれば、そんな長持ちタイヤは寿命分だけ割り増しにして販売するところでしょうか?でも、雨の多い環境ですからウェット時の性能も見逃せない訳ではありますが・・・。


最近では大手ドライブショップ等でもアライメントサービスを受けられるようになりました。気になる方は価格の方もあたってみると良いと思います。

「片減り」を認識されている場合は即入庫が賢明でしょう。
片減りをするという事は、その分だけ引きずっている訳ですから当然走りに影響が出る。その影響が体感できる程大きくなくても燃費の方で実証されていることもあるでしょう。
基本的には直進する方向で無理な角度が3次元的にかかっていない事が理想だとすれば、余計な角度は偏摩耗という結果で示されます。

この場合、タイヤの寿命がその角度に応じて短くなります。
でも、斜になって付いているタイヤは早く減るに決まっています。



私は足回りに関して昔から「気にするほう」でしたから、このクラウンバンは8万キロを過ぎたところでボール・スタッド関連とブッシュ類の取替えを行っています。(他のところにも書いていますね)

これは当初から「20万キロを快適に」という旗印の下、実行した訳です。

この作業は現在の日本の整備事情の中ではマニアックで大変な作業です。
作業工賃もさる事ながら、関連する高額部品も同時交換しましたので相当な負担にはなりましたが「新車のハンドリングが蘇る」という効果は殆ど「新車に戻る感じ」として体感できましたから費用対効果という意味で充分に投資意義のあるものでした。

各部の「ガタつき」は、大きくなるとアナライザーを用いてもアジャストが不可能です。締めるところを締めても要(かなめ)の部分にガタがあっては調整をする意味がありません。その意味で20万キロを快適に過ごす為にはこれらのガタつきを抑えて調整する必要があったという事です。

「新車のカチッとしたタイトな反応」
実は新車のステアリングを握った瞬間に伝わるあのクルマとの一体感の殆どはこのクリアランスの少ない状態が演出しているんですね。
これはすべてを新品にする事で復元可能です。

 

取り敢えず、クルマのフィーリングとしてのステアリングの感じというのは関節部分の疲弊によって次第にルーズな答えを出してくる事は間違いない筈です。ただ、一気に進む事はないのでだんだんに馴れながら人間も一緒に歳をとって行きますね。
普通はこういった思い切った整備を入れない限り気付かないうちに進行して、知らないうちにクルマの方が先に他界しているんです。

クルマと一緒に他界したりしない様に気をつけてくださいね。


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