「プラグによってエンジンの表情が変わる」

平成11年6月6日

部品の業界では今や「衰退商品」として認識されているスパーク・プラグですが、
実は今これが最も熱い注目を浴びています。私の巷で特に。(爆笑)


車種によってはこれの交換が容易でない場合も多くなりましたが、
これだけ変化があるとオススメせざるを得ませんね。

「衰退商品」として認識されているのには大きな理由があります。
最近の車は何処にプラグが付いているのか解らない位ゴチャゴチャとしているばかりかご親切にカバーで覆いがされているケースも多く、実は複雑な作為も見え隠れする訳ですが、カーメーカーには「Back To Our Dealers」という考えがあります。
つまり、電子機器を多用している現在のクルマは町工場ではなくて購入先ディーラーのサービス部に入庫して欲しい、この傾向はかなり強いようです。

つまり違った表現をするなら「出来るだけわかりにくく」という方向性がバブルの頃から堂々と強調されてきました。別に「悪い」といっているのではありません。それぞれのメーカー、販売チャンネルが共に今後生き延びて行く為のいわば一つの方針なんです。
そうすると我々部品商とその顧客である整備工場さんの死活問題にもなりますが・・・。

「出来るだけエンジンルーム内を分かり難くして触らせない様に」というのはエレクトロニクスの多用とこの思惑の部分が相互に絡み合って現在に至っているようです。車両組み付け純正プラグが長寿命プラグを使用するのも「さわるな」の一環だという事も充分に理解できるでしょう。

例の某三段跳びプラグに関してお問い合わせも沢山戴きますが私の持論が
「空中で放電しなければ火炎の拡散に好条件とはいえない」
という部分がありまして、あまり興味が湧きません。
三段跳びによる要求電圧は高くなりますから特に高域での失火原因にもなりうるという部分、それに地を這うような放電は延焼性(火炎の拡散)の妨げになると考えます。
ただ、接地電極が無いという画期的なアイデアは素晴らしいと思いますし、低回転域でのトルクアップには効果があると思います。
プラグの接地電極を加工して実感する事はこの部分の体積が
「間違い無く混合気と排気の流速を阻害している」という事です。
つまり「接地電極が燃焼室内で発生したエネルギーをスポイルする方向で働いている事は明らか」ですから、これを持たないプラグではその流体がぶつかる場所は無くなりますからエンジン音が静かになる等の効果は間違いなくある筈です。
加工する事で劇的な変化を何度も体験していますから「これが無くなる」のはスゴイ事だとは思います。

体感の部分では低域のトルクアップとふけの良さがあるはずですから常用域の低いエンジンや市街地走行が主な場合には有利な事もあると思います、つまり発進加速に有効な訳です。
ただ、3800円という単価を考えるとちょっと躊躇しますか・・・、ね。


で、レガシィ BF-3 で色々と試してみましたので、以下ご報告します。



主にこの三種類をそれぞれ体感テストしてみました。
特にこだわりのテストですからプラグのセッティング方向はすべて揃えてテストしました。

チャンピオン・プロジェクトゴールド

高性能プラグの部類では中心電極も接地電極も共に一番ごつい感じ
ただ、この両方の電極に銅芯が入っていることにより電極部の熱伝導を促し、安定した着火性能が得られるとしています。導通、通電性も良いということでしょう。

中心電極は今回3種類の高性能プラグの中では一番太いとはいうものの、通常使用されている従来のスタンダードタイプの物よりはかなり細く、気流の阻害要因は改善される方向のものです。

実際、Audi80 のユーザーさんからご報告を戴いておりますが、ノーマルからこれ(未加工)に変更して「プラグの向きを揃えたところモッサリ・ダルだったレスポンスが豹変した」という事です。

で、私の場合いきなり「パーシャル・ブロー・カット」で「セッティング方向を揃え」ました。
「よもやま・22」の最後に書いておりますが、2000rpm以下のトルク感は相当太くなります。結構ベタ踏み加速なども試した割にレギュラーガソリンでほぼ 11KM/L という結果が出ましたので市街地走行の主なおとなしいドライビングならば燃費の方で貢献しそうです。ただ、どうしても圧倒的な体積分が流速の阻害要因となる為でしょう、3000rpmから上は特筆に価するものがもう一つありません。

少燃費に有効なのは「実用域のトルク」これは特に2000rpm以下という低域でのトルクが充分に使える事と3000rpm以上に旨味が無い為、トルクのおいしい部分を使用すると3000rpm以下で使用する事になるせいだと思います。

未加工のNGKスタンダードプラグとの比較もしてみましたが、スタンダードプラグはやはり「おとなしい」です。敢えてレジスター無しを使用しましたが違った言い方をするなら「表情がない」というのが適切でしょうか。
基本的な素材として「味もだしも付いていない状態」ですからそれでいいといえばそれで充分であって「ベースという位置関係」にもなりますね。

「高域のイマイチ」
これは「スーパーブローカット」にステップアップする事で解決できました。
3000rpm から上の頼りなさは嘘のように解消して非常に軽く吹き上がります。トルク感もそこそここれに付いてきます。
「が、しかし!」
持ち味として一番おいしかった低域のトルク感がスカスカになってしまい、意気消沈。
これは接地電極側の銅芯を削り取ってしまった事による弊害のようです。低域で強いトルクを出していた銅芯による高能率がなくなってしまい、カラーとして色濃かった低域のトルク感をスポイルしたと考えます。

再度新品を未加工からテストしたところ、低域のトルク感はこれも持ち味。未加工のものは少々レスポンスが落ちましたが加工と比べて劣るのは仕方が無いです。このプラグはパーシャルカットで一番おいしくなる事が判りました。
このプラグの標準的な寿命は1.5〜2.0万キロ。

デンソー・イリジウムパワー

高性能プラグの項目でご紹介しました「デンソー・イリジウムパワー」ですが、未加工で使用するには中心電極は極端に細く 0.4mm という事からも想像が付く通りですが、接地電極もやや細めなので「私のお勧め」になっています。
つまり、ノーマルのままでもかなり流速の妨げを克服している。
他の高性能タイプを加工したものと比べても引けを取らないといって良い程のパフォーマンスを見せます。
全域での軽やかさ、静粛性、アイドリングの安定性、そして充分なパワー感。
ただし、「固有の表情」という部分になると厳しい言い方ではありますが「いわゆる優等生タイプ」という表現が的確だと思います。
やや線の細い感じがありますが、加工しない事を前提に「おすすめ」しています。
加工を施さない場合にはこれがベストです。
このプラグの標準的な寿命は1.5〜2.0万キロ。

 

ボッシュ・ブループラチナ

未加工のブループラチナは接地電極が結構いかつい。
これは甲斐のある素材だろうなあ、というのがまじまじと見詰めた時の印象。
未加工のブループラチナは軽いふけこそデンソーイリジウムパワーに劣るものの全体に太い感じがあります。
未加工で体感部分のトータルな判断をした場合にはイリジウムパワーに軍配が上がりますが、
耐久性を考えた時に5万キロ(当然使用条件で異なります)というのは旨味があります。

で、これの「スーパーブローカット」はどうかというと、
劣っていたふけの部分は加工によって克服される為、イリジウムパワーと同等です。
線の太い感じは全域にあって、特に高域のパワー感が際立つようになりました。


「加工を施す」のが前提の場合には耐久性の部分も更に意味を持ちますからこちらがオススメになります。
最終的にこれら全ての体感テストではブループラチナのスーパーブローカットが一番良い感じ、という結果です。

ところがところが・・・

その後のテストでは新発売になりましたNGKのIXシリーズとIX-PというイリジウムMaxが良い様です。
現在はNGKがお薦めです。(1114’02)


当然 BF-3 レガシィはこのブループラチナのスーパーブローカットに落ち着きました。
これで「相当満足」のレベルに達したので、しばらく楽しみだったプラグのテストは一段落しました。
いやあ、満足満足。ストレス・レスの NA/1800 になりました。(^○^)

早速今日、うちの奥さんに乗ってみてもらいましたが、
「どうだった?」と聞くと
「スッゴ〜イ! また軽くなったよォ。小学校の前の坂をサードでスーッと登っちゃった!」
と喜んで貰えました。(やっぱり判るか・・・) o(^-^)o 得意満面

こうなると次の教材としてやはり程度の良い状態の旧型 MR-2(AW10) が欲しくなる今日このごろ。(笑)

プラグによって、またその「加工」によって様々に表情を変えるのが非常に興味深く結構楽しい毎日でした。
ケミカルチューンとプラグの改造でここまでクルマの状態が変わると本当に色々試してみた甲斐があります。


それぞれに表情の違う高性能プラグですから本来一概にどれが一番というのは間違いで、基本的にはその用途に合わせて「好み」で選ぶべきなのだとは思います。それと、プラグの加工に関しては私が私自身の為に行っている事であり、これの改善を目的として自分の車に自分の責任でやっている事です。

そもそも「プラグ・セッティングの向きを揃える」という話に始まる一連のこの「加工プラグ」の話も、「改善」の為にご提案している、というか実体験での話です。
中には測定数値的にどうかとかいう話にこだわる方がみえますが、例えば楽譜上のスタッカートはそれを演奏する上で表現するアーティストの裁量によって同じ楽譜が全く違ったリズムによって奏でられるように、まるで違った印象を与える事が珍しくありません。
つまり「数値上には単なる測定誤差程度の差」がフィーリングという人間の感性部分では非常に大きなウエイトを占める事も往々にしてあるのだと思います。
これほどの体感差があるものを敢えて数値で表示する必要も感じませんし、また信じない人達を説得する気もありません。
「恐い」という方もみえると思いますが、逆にターボやハイコンプを組んだ上で敢えて試してみたいというチャレンジャーもおみえになり、これらは今のところ5例ほどですが問題は起こっていません。
私は NA ですが、レブに当るまで回してみたりもしていますが大丈夫でした。
(あ、充分説得しようとしてる・・・?)でも良いからオススメしている訳でこんな事がありますよ、という耳ヨリな話は黙っていられない性分なんです。(笑)

今回色々とプラグを試す中で一番強く感じた事は:
「新車エンジンの当りとハズレ」

ガソリン車に関してはこのプラグセッティングの向きによって、ごく希にプラグの向きが良い向きに揃っていたり、全く逆に悪い向きに揃っていたりもするのだろうな、という事です。
良さそうな向きに揃えてやるだけでかなりの改善が見られる事は先の Audi80 さんの話からもお判り頂ける様に「回りやすい環境のエンジン」には「良いアタリ」が出る事も解ると思います。
つまり、回りやすいエンジンは回りにくいエンジンとピストンの首振り位置も違ってきますから長い間に回り辛いピストンの軌道がシリンダーに刻まれてしまう事で外からは改善の余地が無くなるという事も充分有り得る訳です。
「育ちが悪くなる」とでも表現するとしましょう。



「プラグの向き」なんて細かい話・・・

といわずに実践してみるのが得策だと信じます。


あなたの愛車をサラブレッドに育て上げる為のホンの気遣いです。
この意味が理解できた方、
そしてまた更に「加工」を試してみたいという方はお問い合わせ下さい。




 

メールはこちらまで: info@alisyn.jp


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