ドライ・スタ−トと暖気
ドライ・スタ−トは朝一番、スタ−ト時に発生する油切れの話ですが、
やはり低温によるオイル粘度の上昇を考える時、冬場には少し余分に気を遣いたいですね。
エンジン始動後オレフィスからオイルが供給されるまでの間に無理な荷重をかけない事でかなりマシにはなると思います。いきなり走り出すなどは論外ですよね。
従って金属面を保護する為の何らかの「得策」がなければここでの摩耗はある程度のレベルで「必然」となるでしょう。それは作動休止期間にエンジンが冷めてしまう為その温度変化にも起因すると考えられますが、エンジンの冷める間がないタクシ−の場合:エンジンが冷めない=オイルも下がり切らないという事です。
先日タクシ−関係の方にお聞きしましたが、よく走る人で一勤務400km。オイル交換は3ヶ月に一度、大体1.5万−2万キロ毎。年間多くて8万キロ、約30万キロ走って廃車になるという話でしたが、普通はLPオイルを使うだけでオイル添加剤等は使用しません。通常最後の10万キロはかなりオイル消費量が増えて我慢の約1年になるという事でした。
タペットにHydraulic Valve Lush Adjuster を使用しているエンジンの場合、オイルの供給がない間はこの油圧による微調整が効かなくなる事がありますから、時としてタイミングのばらつく事があるかもしれません。この時に負荷をかけない方が良いのは当然です。オイル管理が悪いとこの油圧シリンダ−が詰まり、作動しなくなります。詰まる前にもオイルが供給されなくなれば当然機能しなくなり、エンジンに大きなダメ−ジを与える事になります。
始動時に作動音が大きい場合は少し静まるまで待つ事を心掛けると良いでしょう。大抵の場合、ガラガラ音かガチガチ音、シャ−シャ−音などの金属的な「固い音」です。オ−トチョ−クでアイドルが上がっていますからエンジン音が大きいのは当然ですが、明らかな金属音がある場合はその「ざわつき」が収まるまでしばらく養生してやる事がいたわりになります。
全体にオイルが循環し始めれば徐々に暖まっても来る訳ですが、完全に熱くなるまで暖気をするのは燃料の無駄になると思います。ウォ−タ−ジャケットのク−ラントが完全に熱くなれば今度はサ−モスタットが開き、冷却の為にラジエタ−に回る訳です。
暖気に関してはエンジンばかりに気を取られがちですが、「極圧」の事を考える時、エンジンよりもむしろ駆動伝導系の方が余程高い負荷を背負っています。この為に駆動系には極圧剤が初めから導入されている訳で、実際に「ミリテック」をお使い頂いたユ−ザ−さんからはエンジンよりも「ミッション系に起こる激変」の方が意外で驚かれるようで、もともと駆動伝導系のもつ摺動負荷の高さを示すものでもある訳です。
「ミリテック」は金属面を強化?し、その表面は非常に滑り易くなりますから当然このドライスタ−トを始め摺動面が暖まるまでの間に金属面がダメ−ジを受ける事へのバリア−として機能します。
最近「ミリテック」の「追加注ぎ足し」によるステップアップでは「アゴがはずれそうになった」というご感想をよく頂きます。勿論、エンジンも駆動系も両方の話としてです。
どれだけ長時間暖気をしても止まっていてはデフ、MTMの暖気は出来ません。従って動き始めはしばらくそっと走った方が機械の為でしょう。優しさの部分の話です。
テフロンのうたい文句としての方が有名になってしまった感のある「ドライ・スタ−ト」ですが、実際のエンジンが暖気運転だけを繰り返すのなら=極めて低い負荷域だけならばテフロンでもそこそこの潤滑効果を発揮すると思います。テフロンも高温にさえならなければそれ程強い酸化傾向は示さないでしょう。皮肉な言い方をすればこれによって形成される酸化物はコンプレッションを上げる効果もありそうです。オイル漏れも止まるという意味で漏れ止め製品もあるっていいますからね。その意味ではテフロン関係が強調した「ドライスタ−ト」の作戦は「樹脂表面の艶出し」の話や「燃料タンクの水抜き」の話と同じく「ユ−ザ−を説得し易い話題」としてフュ−チャリングされて来た、といった方が良いのかもしれません。
ドライスタ−トの話ばかりが取り沙汰される中で実際には「ぶん回し」がどれほどエンジンに損傷を与えるかの方が大切な話に変わりはありません。それは「ぶん回し」で起こる油膜切れもドライスタ−トと同じ事ですから高回転時には瞬時に摩耗が進行します。当然ですよね。
ただ、「ミリテック」を使用すると最高回転数は従来の限界値よりも回ってしまいますので、あまり回し過ぎない様に気を付けて下さいね。大事にするという意味で必要な心がけです。
余分に回るようになっても得をするのは「実際のトルクレンジ」であって「最高回転域ではない」訳ですから沢山回した分のお駄賃はマイナス要素しか考えられません。当然余分な燃料を消費し、余計な発熱はオイルもヘタり、無駄な発熱によって爆発力も低下しますからやっぱり損をします。
「よもやま話・12」トルク本願と馬力本願を参照して下さい。
必要な暖気をせずに走り出すと・・・
冷たいエンジンの燃焼室にチョ−クの効いたリッチな燃料が押し込まれ、摺動部が重たくギクシャクしている状態を想像して下さい。
ここでいきなり走るという行為は更にリッチな燃料を送り、空ふかしでも回りにくい所へ駆動トルクをかける為エネルギ−の効率としては最悪の条件を強要する事になります。
結果どうなるのかというと、排気ガスはHCだらけになり、COも当然多い。つまり、不完全燃焼で生ガスと一酸化炭素を撒き散らして燃料をだらだらと流しているような状態です。
通勤時間帯に路地から飛び出してくる車の後ろで窓を閉めながらいつも思います。
「あと3分早くエンジンかけろよな!」
問題は当然排ガスだけでは収まりません。完全燃焼していないという事は燃えにくい粗悪ガソリンを使用しているのと同じ様な結果になります。つまりエンジン内部にはスラッジやガムの発生が増える事になる訳で、機械的損失を発生する起爆剤にもなるでしょうし、その分オイルにもHCが混ざり潤滑性能を落としたり、単純にエンジン内部やマフラ−の排出口も見れば判る位の汚れが出てきます。
一台の車の使用可能な箇所全てに「ミリテック」を使用して、どういった変化が起こるのかを体験、観察されれば機械の作動という物理的な運動が従来何処でどれくらい機械的な損失を起こし、それと同時に発生したエネルギ−を「摩擦熱」として還元してしまっていた事実を多くの場面で知る事になると思います。その意味で言えば、機械的な損失もドライスタ−ト時だけではない事が分かるでしょう。「うるさい機械は長持ちしない」と申し上げているのはその事で、スタ−ト時のエンジン音が大きい時にも同じ事がいえる訳です。
静かであったり、ふけが良くよく回ったり、いわゆる調子が良いという事は機械としての良い状態です。
調子の良いエンジンはその結果として燃費も良くなります。「いたわり」という部分ではほんの少しの気遣いの積み重ねで良い状態はその分長続きしますから少しでも実行する事でその分は快適というお駄賃で帰ってきます。
気遣わずに「快適」を買えばかなり高くつきますよね。
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