「フランツ・タイプのバイパス・オイルフィルタ−」
一般的にフランツ・フィルタ−と総称されているバイパス・フィルタ−は、もともと工作機械の補助フィルタ−として使用されていたものです。「バイパス」つまり通常のオイル・フィルタ−に加えて濾過能力の特に優れたフィルタ−を追加し、メインのオイルラインをバイパスする形で常に少量ずつがこのフィルタ−で濾過されることで通常のオイル・フィルタ−では除去する事の出来なかった煙に近いほどの細かな汚れも取り去るため、オイル中の濁りすらなくなる程です。定期的なフィルタ−のメンテナンスによってオイルは透明度を保ち続けます。オイルの性能劣化が殆どない場合か、運転中に発生する不純物(スラッジ、ワニス、ガム、カ−ボンなど)又は摩耗金属粉が多い場合には非常に有効といえます。
長距離の路線トラックなどに導入されているケ−スが多く、「ディ−ゼルのライトバンにこのバイパス・フィルタ−を取り付け、10万キロの間オイルを無交換で注ぎ足しだけでも問題は起こらなかったという報告」も聞いています。ただ、このバイパス・フィルタ−が5万円位しますから、取り付け工賃とそのエレメント代を考えてみればどちらが安いという話ではなくなります。勿論、大切な機械、車を守るためには良い方法ではありますが、バイパス用の電磁ポンプの必要性も考えられるので金にいとめをつけないヒト向けでしょう。
実はここで、私達は重大な疑問の前に立たされている事に気付きます。
というのも、この実験に用いられた車は2リッタ−・クラス/ディ−ゼルです。エンジンの状態を通常の方法でキチンとメンテナンスされていたものと比較しなくてはフランツ・フィルタ−の評価としては意味を持ちませんが、少なくとも10万キロの間注ぎ足しだけでも問題が起こらなかった・・・。
普通このクラスのディ−ゼルオイルを2万キロ無交換で使用した場合、途中で不足分の補充をしたとしてもカ−ボンの混入で墨汁のようになりますから「それだけでかなり危ない状況」になります。ディ−ゼルの話ですから、このカ−ボンによってガソリン車の場合よりもずっと問題が深刻になるわけです。
オイル・メ−カ−のふれ込みによれば未使用のオイルにも消費期限がある(2年くらい)という話で、それはベ−ス・オイル側の酸化劣化が原因であると説明されている筈です。
このテストを実行した「潤滑士」本人の言葉を借りれば「オイルは酸化なんてしませんよ、不純物さえ取り除いてやれば充分使えるって事です。」というオイル・メ−カ−・サイドとは一見かけ離れた勇気あるともいえる発言。
キ−ワ−ドは「不純物」という事になるんでしょう、不純物の形成と残留がオイル性能の寿命に大きく関わりを持つ事は間違いないと思います。つまり、それらの生成と残留が加速度的にオイル性能を劣化させるのだろうという事、現時点では私の口からはこれ以上申し上げられませんが、ロング・ドレ−ン性という問題はこれから更にクロ−ズアップされて来る話です。
オイル・メ−カ−のデリバリ−を担当するタンク・ロ−リ−等にも実はこの「フランツ・フィルタ−」の装着されている車両を多く見かけます。つまり、その有効性と有益性はオイル・メ−カ−も認知済みという証明でもあります。
この事から全ての車両にこれの装着を義務づける位の進歩的な政策が今後早い時点で実現すれば良いと思うのは私だけでしょうか。でも、それは恐らくカ−メ−カ−・サイドの政治的圧力で潰されてしまうタイプの物でしょうね、勿論「長持ちし過ぎる」という理由で。
フランツ・フィルタ−はかなりの微粒子も捕らえる事が出来るためこれを使用している場合、使用中のオイルサンプルを見ると「透明な状態」(当然フィルタ−のメンテナンスが条件)です。通常油圧機器に使用されているオイルをこのフィルタ−にかけると「清水のように透明」になります。ですから、ディ−ゼル・オイルの場合は「薄いあめ色」になります。つまり、オイル中の不純物は殆どゼロに近い状態と考えられます。
不純物は瀘し取ってしまいますから、固体潤滑剤は当然この網にかかります。
つまり、モリブデン、チタン、ボロン、硫黄、フッ素等に代表される金属、鉱物、樹脂ベ−スの固形成分は全てこのタイプのフィルタ−を通過できないため、デポジットとして瀘し取られます。
フッ素樹脂を新たな手法で液化できたとしても、フッ素樹脂自体が極圧と高温には弱いため、仮に金属面にフッ素樹脂被膜を形成する事が出来たとしても高温にさらされて炭化もしくはスラッジ化して剥がれ落ちてしまいます。果たしてその時液状でしょうか?これは、フッ素樹脂が樹脂である以上粉体であろうと液体であろうと、結果は同じということになります。三井デュポン・フロロケミカル(株)の研究室によれば
「フッ素樹脂(テフロン)は分子量を出来るだけ小さくするためにその製造最終工程でフッ素と炭素の結合を切り離してあるため、高温によってこの部分の再結合が起こる時、物性は酸性に傾きますから、実際にご使用になる場合は慎重に Watching してください。」というコメントでした。
情けない事に「添加剤原料」と称してテフロンパウダ−を袋詰めにして高額で売りさばく商売もあります。テフロンの多岐にわたる有効性は私も認めますが、エンジンオイルの添加剤としてはちょっと。
「ミリテック」には固形成分は一切含まれていないため、フランツ・フィルタ−が目詰まりする心配はありません。つまり、その双方の効果にも変化はありません。
共昌膜を形成すると説明している「GRP(Great Real Power)」は、摩耗金属粉とGRP成分がこの共昌膜を形成するという話ですから、フランツ・フィルタ−で金属紛を回収してしまうと機能しなくなるのではないかと考えられますが、実際にはそれ以下の分子オ−ダ−・サイズ、つまり原子に近い物が共昌膜の核となるという事なのでフランツ・フィルタ−の使用は問題ないという話です。
フランツ・フィルタ−の話に戻って、
「トラスコ」のトイレット・フィルタ−もこのエレメント部分は殆ど同じものなので高度な濾過が可能なようです。ただバイパスという考え方ではなく従来のフィルタ−の代わりに取り付けることになるため、フィルタ−詰まりには日頃の細心な注意が必要になります。