「よもやま話・15」

乗り心地と快適性

乗り心地のよいクルマは日本車の場合沢山あるように思いますが、快適性という尺度で判断した場合に脱落して行くクルマはどこが違うのか?ちょっと気になったので考えてみました。


そもそも「乗り心地」という価値尺度は「お国柄」で日本の場合クルマを評価する言葉として長い間使用されてきた経緯があるようで、ユ−ザ−サイドのこの価値基準に応える形でカ−メ−カ−はクルマを供給してきた感もあります。

  1. 「乗り心地」の意味するもの
  2. 「快適性」の意味するもの

 

1.「乗り心地」の意味するもの

「乗り心地」という言葉の意味を考えてみると、それは非常に日本的或いは東洋的な「漠然とした空間」を意味している様に思います。ちょっとこじつけ臭く思われてしまうかもしれませんが、「乗り心地」という観念は「あたかも移動していない」ように「移動を意識させない事」を最大の美徳とする考え方のような気がします。つまり漠然とした無感覚の空間を最良とする「無」の世界観。(ますますこじつけ臭い?)

こじつけ臭いかどうかは別にして、このような「乗り心地」という概念の方向性は無振動、無音を善しとする為に「スピ−ド感」をも犠牲にしてきたようです。実際のスピ−ド感を演出できない為に「無感覚のまま高速走行する」といった無謀な事が事実起こってしまっていたといえるのかもしれません。

最近は高級セダンでも随分とコ−ナリング性能が重視されるようになりましたが、かつての高級セダンはコ−ナ−でのロ−ルがひどくて「恐い」乗り物だった印象が強いのは事実です。いづれにせよこの「乗り心地」という非常に漠然とした価値尺度で長い間クルマを評価してきた事に違いはないようです。

2.「快適性」の意味するもの

「快適性」はそうすると漠然としていないかというとこれも感覚的なものだとは思います。ただ、「乗り心地」という日本的な発想に対して「欧風」のクルマに対する評価観であり、大きな違いは無振動、無音を美学とするのではなく、極めて合理的な機能美を採点するものではないかと思います。

つまり、クルマは移動してなんぼですからその機能を効率よく果たす事が善しとされる、といえばよいでしょうか。それは喩えて言えばコ−ナリング性能に対して「安定感」であったり、「安心感」であったり、「信頼感」などの総合的な評価として「快適かどうか」という事で判断される訳です。

その意味で、このペ−ジでお話する内容はクルマの機能面での話が中心となっているため「」乗り心地」ではなくて「快適」かどうかといった事柄でご説明しています。

更に極めて観念的な話になるかも知れませんが、

そうして考えてみるとクルマに対する考え方が「ドライバ−サイド」なのか「ナビあるいは後部座席サイド」なのかということもいえるのかも知れません。つまり、運転者にとっては「乗り心地」がよい事で運転疲れが軽減されたり運転が愉快になったりする事などない訳で、適度な硬さを持ったシ−トやサスが運転疲れを軽減するし、路面の状態などを把握し易くなる為に安全性などにも寄与する事になります。



「遊び心」とか「楽しみ」「楽しさ」といった嗜好の部分はどちらかというと能動的な部分が強くなる為「快適性」の部類に入るのだと思います。(ちょっと無理のある理屈?)

そもそもクルマは移動する為の道具ですから、その基本的な目的を達成するための気配りに工夫の凝らされたものは機能的に優れていて使いやすい筈です。
それは「おまけ」がてんこ盛りになっているのとは意味が違います。
日本人或いは日本における製品の供給には常にこの勘違いが付きまとっています。パソコンもいい例ですがプリインスト−ル・ソフトのてんこ盛り。家電製品、オ−ディオ機器の付加機能てんこ盛り。すべて「勘違い」または「迷惑な押し売り」に近い、というのも熟達しないとその「てんこ盛り」を常につかまされる訳ですね。

あれもありこれもあり。つまり、どれを取ってみても「ハズレ」がないようにフォロ−のおまけで穴埋めをしようなんて考えの製品には当然強い指向性はありませんから中途半端な「XX風」にしかならない。
万人受けするもの、まちがいない受注を見込めるものだけを造る姿勢は「乗り心地のよい」クルマを送り出す訳ですね。これからも一部(沢山?)のそういった需要の為に供給されるということになります。


つまりそこです。

受動的な人はこれからも常に与えられるままに受け入れて行けばよい訳で、能動的な人は自ら選択し、機能美を追求して「快適な」クルマを手に入れる事になります。当然その中で価格的な折り合いというのが付き物ですから「出来る範囲内で」という事になりますが、前者の場合もそれは同じですね。

ただ、「新規購入」するばかりが能ではなくて、「今あるもの」をもっと快適に使おうとする「工夫」はユ−ザ−・サイドで出来る事ですから、少しでもお力になれればとHPの更新を続ける日々です!

「快適」というのはヒトが決める事ではなくて「あなた」が判断することなんですから。

だから、もっともっと「快適になります!」ホントに!


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(98年12月29日)