「よもやま話・29 」
世の中せち辛い

平成11年9月2日

整備業界はもとより、燃料を含む油脂販売業界でも「オイル」というのは粗利の高い商品です。燃料の販売価格はこの処の安売り合戦で燃料油の販売業界ではかなりの淘汰も余儀なくされているようで、生き残りを賭けた厳しい状況が続いています。


私がこの業界の方とお話をすると「ミリテック等でオイルが長持ちする事」に関してよく言われる事なんですが、
「油を売らないと商売にならない」
「油が長持ちした分の利益は誰が保証してくれるのか」
「長持ちする分だけ利益を上乗せしてでないと販売できない」
というのが単刀直入なっご意見のようで、それだけ厳しい現状を反映した重みのある言葉として受け止める訳です。
結局、ユーザーが得をする話は別のところで儲け損なうヒトがいるという事になるんでしょうか。


油屋さんは油を売るのが商売ですから当然油を売ってナンボです。販売量のすべてが倍の寿命の油になれば出荷量は半分になってしまうという意味です。
それに、よく耳にするのが
「○×石油の看板で商売をしているから毎年なり、毎期の目標を達成できなければレスカウントが受けられない。」
といった「ノルマ」の話です。
実際、このノルマの為にオイル・メーカーにとっては拡販努力という直接的な効果は見られるのでしょうし、目標達成によって仕入原価が下がる事は販売店側でも商売の上で重大な意味を持ちます。
つまり、数量であれ金額であれ数パーセントでも上に設定された目標を達成する事は「必ず対前年同期比で上昇」する訳ですから、達成時に原価が下がる事はそれだけ粗利が増えますからダブルでおいしい訳ですね。(実際にはそれくらいの旨みが無ければ商売として成り立たないという話なんですが)
それほど切迫した状況で販売の現場はハッパをかけられて必死で売り上げを確保しているというのが実状でしょう。勿論、中にはあまり努力しない現場もあるでしょうし、努力する現場もあるわけです。
でも、このノルマを達成できない「その度合い」によっては
「オタクは協力する気がないのか?無いなら無いでウチの看板を外させて貰う事になりますが・・・。」といった事にもなるようでして、いやはや、当然の事の様ですが、せち辛い。

そうして考えてみると「売り上げ目標は常に上昇」する訳ですから違う見方をすれば「廃油はどんどん増える」という傾向を助長しているようにも見えて来ます。世の中の空気は「環境遵守」ですからここでも「経済と環境」は正反対の性格のものである事を思い知らせれるんです。

オイル・メーカーとしても結局は販売店と同じ立場ですから全ての物流に倍の寿命を持つ製品を流せば単純に物量が半分になっても仕方がないでしょう。そうしてみると5倍の寿命を詠うオイルにはやっぱり4〜5倍の価格が付いている事にも納得せざるを得ませんか・・・。


昔からある商慣習の一部ですが、
このトータルレスを得たいが為に、期末に発注を押し込んで目標プライズをゲットするというのはよくある話。
つい先日も運送業者の方からお聞きした話ですが、
とある自動車メーカー系部販から「純正オイル」をドラムで10本買うと、1本オマケしてくれる。
といいます。
その運送屋さんは常時その純正オイルを買う訳ではないけれど、部販さんが困っている時に相談にのる形で購入するということです。お互いにメリットがある訳で、常にその価格では買えませんが、社外秘にする代わりに時々その特待を受けられるという事の様でした。
後日、別の石油商社でそんな噂話をしていたら、
「あの部販はまだそんな事してるの?いい加減にそういう馬鹿げた事はやめればいいのにねェ」
とおっしゃってみえましたので有名な話なんです。(笑)
いちおうタブーという事で・・・。


セルフ・スタンドは勿論ですが、出来るだけスタッフの手間を減らして販売価格を抑えようとするGSさんも増えているようです。
私が「プレミアム軽油」を68円で入れている会社近くのGSさんは「当店ではお客様の車を誘導致しません」と大きな看板が出ています。レジの横には次のような貼り紙があるのを発見しました。


「廃油処理料:リッター30円、バッテリーコア回収料:300円、古タイヤ処分料:400円」


おー、オイル売って作業料込みで高いオイルを売った上に廃油の量だけ金取るのォ?
まさか、自分で交換したヒトの廃物の処分料を掲示しているとも思えない。
それに自分でタイヤの脱着ってしませんよね、普通買ったところでしてもらう・・・。
まさかまさか、GSさんがセルフ・オイル交換を不特定多数のお客様に奨励はしていないでしょうに・・・。
うー、ちょっと寒くなってきた。せち辛いなあ・・・。

私はご存知の通りかなり沢山走りますので例のレガシィも毎度そちらにお世話になっておりました。
で、私としては「常連」のつもりだったのですが、ある日「レガシィのマフラーを交換する為に少しだけピットを貸して下さい」というと
「30分2000円です。立柱リフトは壊れていますからガレージジャッキでの作業になりますがよろしいですか?」
という所長のお答え。
リ、リフトが使えないのに、に、2000円?
いや〜ぁ、究極のスーパーせち辛い!


もしかすると嫌われてるのかなあ・・・、とか考えましたが思い当たる事もありません。
「いくらで作業して頂けますか?」という質問をするべきっだったという事でしょうね。
結局、私は会社の駐車場で枕木に乗り上げ、ちょっとだけ苦労して下に潜って作業しました。
4WDはその点段差のある枕木にヒョイッと乗ってくれまして、便利でした。(笑)

ちなみに、そこのGSさんはPTFEの添加剤を販売しておいでなので私は「ミリテックの営業」はしていません。だって、自信を持って売っているものにケチを付けられれば誰でも気分が悪いでしょう?
・・・つまり私はただ普通のお客さんです。
そりゃぁ、所長さんに「これってイイんですか?売れてます?」位の冷やかしはしましたけれど・・・。
いくらなんでもそれくらいで気に障ったりはしませんよねぇ。(笑)


つまり、やっぱり「せち辛い」これに尽きます。

大手商社の運営するGSさんですから、そこら辺のこと細かな部分も徹底した決まり事で管理されているという事なんでしょう。
それはそれで立派。小さな店では真似の出来ない姿というべきなのかも知れません。
ちなみにこのGSさんは三ヶ月有効のスタンプカードを発行していて、期間内に
「軽油なら450リッターで、ガソリンは300リッターで1000円の給油券」
を発行してくれます。(給油券の発行時点でまた新しいスタンプカードが発行され、そこから三ヶ月の有効期間)
「常連さん」「優良顧客」にはそれなりのフィードバックをしていますという事ですね。
一切の無駄を廃絶した徹底したギブアンドテイクは無味乾燥という印象は否めないにしろ一つの理想的(健全)な販売の姿なのかも知れません。

ひとこと「世の中せち辛い」で片づけてしまうのも方法ですが、今迄の良い所を残しつつ現代風に脱皮する事は難しいという事でしょうか。

別の解決方法があればそれも一つの生き残りの姿になりそうな予感はするのですが、残念ながら今のところ思い当たりません。


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